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好みの話じゃなくて、好きの話

3/9(sat) スペースシャワー列伝 2とTheSALOVERSと古舘佑太郎のこと

 

この日を目前にして聴いていたのはSALOVERSの「珍文完聞」というアルバムで、中でも「雨降りのベイサイド」はやっぱり特別好きな曲だ。雨は嫌いだけどこの曲は好き。こんな歌声を、初めて生で聴ける日が本当に来るのだ。嘘のような、夢のような、でも、本当のこと。このところ雨ばかり降っていたけど、当日は久しぶりに気持ちの良い晴天だった。

 

今回のスペースシャワー列伝、目当ては2。一緒に行った友達はHumpBackだった。会場に着くとHumpBackとtetoのグッズを纏っている人が圧倒的に多くて、2のロンTを着ている私は正直ほんの少しだけ肩身が狭かった。たまに2を着ている人を見かけると「おっ」となった。是非お話をしたいくらい。しないけど。開演前にドリンクを交換しに行ったとき、ゆずサワー?みたいなお酒を飲もうとしたんだけど、まさかの年齢確認をされてしまった。もうロッカーに荷物を入れたあとで何も持っていなかったので、仕方なくジンジャーエールにした。めちゃくちゃゆずの気分だったのに…。ライブハウスで年確なんて聞いたことないよ…。でもそのジンジャーエールがなんか甘ったるくて美味しかったので、まあ、結果オーライ。

 

18時に開演、一番手のヤングオオハラが終わると、転換を挟んでから2が出てきた。私は会場の中間くらいにある柵(手すり?)のところで見ていたんだけど、4人が出てきて古舘がギターを持ち、「二番手は俺たち2だ~!」と叫ぶと、前方の真ん中辺りにワアッと人が集まり、急に人口密度が上がっていたのが後ろから見ていてすごく良かった、というか、なんか感動した。

SALOVERSの頃からずっと追いかけていた古舘佑太郎。彼の作る曲は本当に良い。初めてSALOVERSの曲を聴いたときから7年間ずっと、「オールド台湾 行ってみたいわん」とか言ってる頃からずっと、本気でこの人は天才だと思っている。「愛しておくれ」は冗談抜きに名作だ。ヘタ上手、みたいな部類の歌声は彼がオンリーワンでナンバーワンなので、もうそういう歌い方を持ち味としようとするボーカリストは現れないでほしい。

SALOVERSの頃もソロだった頃も今も、本当にずっと彼を追いかけてきたけど、ライブに行ったことは一度もなかった。中学生の頃はまあ仕方ないとして、高校生に上がっても時間が取れず、2年生に上がる頃にSALOVERSは解散、ソロの活動をしていたときも部活やら受験やらで十分に応援しきれなかった。大学生になってから発表された2の結成は、解散後もずっとSALOVERSの面影をなぞっていた私にとっては複雑なもので、最初の頃は聴くことさえも拒んでいた。去年の、春か夏くらい、YouTubeケプラーのMVを何の気なしに再生したときに、SALOVERSを見つけた頃と比べるとずいぶんと大人びた彼がいて、それでも「ケプラー」とか「グリーゼ」とか、知識を見せつけてくるような歌詞や、肩からギターを下げてマイクスタンドを押し倒すほどの圧なんかは、昔と何も変わっていなくて安心した。それからどんどん好きになり、今に至る。大人になった彼が作る曲は、それはそれでSALOVERSとはまた違った良さがあった。「SONG FOR YOU」なんかがその例だけど、大人になり、愛しい人への真っ直ぐな愛情を歌えるようになった彼は強い。サラバーズでこんな曲はできなかった。「好きだ」とか「愛してる」とか、そんなロマンスの欠片もないようなことではなくて、「駅前で聞くんだ "明日何時起き?"ってね」なんて歌っていた彼が(SALOVERSの「床には君のカーディガン」という曲の歌詞。14歳で初めて聴いたときはまるで意味がわからなかったけど、歳を重ねるにつれてだんだんわかってきた。この言葉すごい)、「運命のお姫様がヘルプミー SOS だけど今は迎えに行けない 君に恋してる」なんて、カッコよすぎる。思わず私の中の乙女が唸った。少年が青年になり、その青年がまた大人になった。あれ、話が逸れてる。とにかく私はこの日、泣くほど好きな古舘佑太郎を初めて生で見る、7年間温めた思いを2というバンドにぶつける、そういう気持ちであの場所にいた。

雨は嫌いだけど、奇しくもSALOVERSで一番好きな曲は「雨降りのベイサイド」だし、この日のライブで一番気持ちが高ぶったのが「土砂降りの雨が降った街」だった。ステージと私との間で、本当にたくさんの人が拳を上げている。何人の人がそうしているかもわからないくらいで、目の前に人が塞がることもあったけど、古舘佑太郎だけはずっとしっかり見えていた。正直、この曲で特別に取り上げるような歌詞やギターはない。いわゆるミディアムテンポ?というやつで、めちゃくちゃ盛り上がれるようなメロディでもない。でもすごく良かった。ライブ映え、かな?序盤でこの曲を演奏したので、それからはもう文字通り浮き足立ってしまって、隣にいたお兄さんも2が好きだったのか、二人して前方で起こっているモッシュのような盛り上がりを見せていた。自然と手が上がる。追いかけ続けた古舘佑太郎が、声が、音が、こんなに、近い。それだけで、なんだか泣きそうになってしまう。

正直に言うとマジで曲順を覚えていないので、ピックアップしたい曲をピックアップしたい順に。

新曲、ルシファーがすごく良かった。冒頭が古舘のゆっくりな弾き語りで、「友達の彼女と遊びたい」(歌詞は正確じゃないけど、まあだいたいこんなニュアンス)と歌ったときに大袈裟に笑ったお客さんに対して彼が、「そこ笑うところじゃないから!」と照れ臭そうに言っていたのが、なんというかまあ、可愛かった。こういうときの感想が「可愛い」とは、結局私も女だよなぁと思う。でも彼はマジでイケメンなので仕方ない。古舘佑太郎はマジでイケメンだ。大人になってさらにカッコよくなった。あんなイケメンなら友達の彼女とも遊べるだろう。歌詞も聞き取れた感じだといかにも古舘佑太郎。メロディも良い。チラチラ見えるドラムの女の子がマジでカッコよかった。普通にアルバムが楽しみになった。

あと、後半の一発目くらいかなぁ、ケプラーが始まったときに会場の空気がガラッと変わったように思えた。少なくとも、私は変わった。待ち望んだ曲だ。私がそうだから、大概の人もそうなんだと思う。隣のお兄さんも楽しそうだった。本当にカッコよくて、また思わず泣きそうになった。カッコよくてというか、それに安心してというか、またバンドとして演奏している彼を見られて良かった。ソロのときもアルバムを買ったりしていたけど、やっぱりどこか物足りない感じがしていて、それはSALOVERSじゃないからだと思っていたんだけど、違ったみたい。バンドの曲が聴きたかったんだと思う。また仲間を揃えて生き生きとギターを鳴らす古舘がカッコよかったし、それを見られて嬉しかったし、そんな姿に安心した。それはSALOVERSの解散がマイナスなものではないという証明にもなった。"2"というバンド名を掲げるだけあって、前に進んだ彼らの結果でもある。何が言いたいんだっけなぁ。とにかく、やっぱりバンドで演奏している古舘が一番カッコいい。出番の前に流れた、アジアのどこかを彷彿させるようなメロディも、頬に入れた赤いラインも、相変わらずだ。相変わらず、バンドをやってくれている。この日最後に演奏した「フォーピース」という曲、実はあまり私の好みではないんだけど、これは彼がバンドに対しての思いを歌った曲みたいで、嬉し微笑ましい、といった気持ち。私は彼を追いかけていると思っていたけど、離せなかっただけかもしれない。バンドの音を求めていた。SALOVERSの再結成を望んでいた。でも古舘佑太郎の「今」を鳴らすのは、2なんだろうなぁ。感慨深いなぁ。でも本当に、すごく良かったよ。

中学生から大学生にかけてのこの7年は、本当に長かった。長かったのに、ずっと彼の歌声を聴いていたんだと思うと、飽き性のクセに懲りずにバンドを聴き続けている自分が少しだけ誇らしい。4バンドの中で、マジで2が一番良かったよ。人それぞれなのは当たり前だから言うけど、2が、一番良かった。輝いて見えた。2しか輝いて見えなかった。下北沢のライブハウスに行ったときだってCRYAMYしかカッコいいと思えないし、列伝だって2しか輝いて見えない。恋は盲目なので。嘘でも冗談でも「みんなカッコよかった」なんて言えない。言ってやるもんか。みんな、の中に2を含むなよ。一緒にされたくない。ただHumpBackの一曲目が「月まで」だったのはすごく良かった。この曲でHumpBackを知って、今でも一番好きな曲なので、普通に感動した。それにボーカルがダイブしていてビックリした。ロックバンドだ、HumpBack。tetoの「高層ビルと人工衛星」も良かった。tetoの曲は私には少し難しいけど、この曲は好きだ。「she see sea」って、天才かよ。シーという英単語を並べてるだけかと思いきや、ちゃんと英文が完成している。でも2が何よりカッコよかった。今度はワンマンに行きたいと、素直にそう思った。

 

夜、これを書きながら土砂降りの雨が降った街を聴いていた。よくよく聴いてみるとなかなかセンチメンタルな歌詞だ。「忘れた傘を届けるため」という理由をつけないと君を追いかけられないなんて、なんだ、全然大人になってないじゃん。見上げると君みたいな虹、下を向くと俺みたいな水溜まり、っていう対比が好きだな。

一息つこうと思ってイヤホンを取ると、窓の外に激しい雨の音が聴こえる。いつの間に、こんな土砂降りに。もう何年も前、「こんな雨の日は 雲の隙間に宝を隠す」と歌った彼は、今この雨を見て何を思うかな。変わったかな、変わらないかな。私は今でもSALOVERSが本当に好きだけど、いつまでもただの友達でいたかったなんて解散理由、全然受け入れていないけど、彼のセカンドストーリー、それに寄り添うメンバー、2のほうが好きだと思えるくらいまで、今までどおり追いかけていたい。晴れが似合うバンドだと思う。SALOVERSにはなんだか雨ばかり降っていた気がするけど、2は晴天がよく似合うバンドだ。あの日の晴れ晴れとした空を見て、ライブ日和だなぁなんて、柄にもなく思ってしまったから。

 

なんか言い忘れたこととか、ないかな、大丈夫かな。めちゃくちゃ余談だけど、古舘の顔を浮かべようとするとどうしてもしずるの村上が先に出てくる。似てるなぁ、ちょっと。あと、彼の話をするときに「古舘伊知郎の息子なんだけど~」というと相手の食い付きがよくなるので、少し話していて気持ちがいい。まあ、私もオカモトズの曲は知らないけどハマオカモトだけは知ってるしな…。そういうもんよな…。

 

おわり。

 

 

追記

思い出した、転換中に歴代の列伝に出たバンドのライブ映像が流れていたんだけど、SALOVERSも出てきた。列伝に出ていたのは知っていたけど、クリープハイプとまわっていたんだね…。SADGIRLの映像だった。この曲もとても好き。「ゲルニカのような美しさ」って歌詞が秀逸すぎる。