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好みの話じゃなくて、好きの話

 

夏の夜というのは、どうしてこうも、おセンチなメンタルになってしまうのだろうか。

今日はどうしても誰かと話したくて、というか、誰かに会いたくて、人の顔を見たくて、午後7時、行く当てもないのに日が沈みきらない外へ出た。いや、正確に言えば、日は沈んでいたんだと思う。それなのにまだ外は明るくて、夏の太陽が持つ力をひしひしと感じた。

 

つい一週間くらい前、バイトが終わったあとに、友達と友達と友達と先輩と知り合いと私の6人でお酒を飲んだ。結局朝方まで飲み倒したあと、どんな流れか覚えていないけどそのままカラオケに行って、帰宅するときにはスーツや制服を着た老若男女にゴミを見るような目で酷く疎まれたことが飛び飛びの記憶の中に残っている。その日の朝日は今までで一番眩しく感じて、私は生まれて初めて夏を呪った。

 

家を出たあと、ただなんとなく歩きながら捕まりそうな友達に連絡を入れる。と、言っても、実際に連絡したのは三人だけ。浮かぶ顔はあれど、自分から誘うことができない人が大半だった。三人中二人からは「無理」と返事が来て、一人は既読すらつかない。男の子の顔が浮かんだあたりから考えることを止め、蒸し暑さに耐えきれなくなったので近くの大きな書店に逃げ込んだ。文庫本コーナーで適当に本を物色していると、既読もついていなかった友達から「いけるよ」と。嬉しくてすぐに連絡を返し、駅前で合流してから初めて行く焼き鳥屋に向かった。

一日ダラダラしたあとのビールは格別に不味い。バイト後に飲むそれが美味しく"感じる"のは、やっぱり喉が渇いているからなんだろう。私はまだまだガキなのかな。温くなって炭酸が抜けると尚更不味くなることはわかっているので、ポテトフライをつまみながら無理矢理喉に流し込んだ。早く、大人になりたい。一足先に社会人となった友達は、レモンサワーを飲んで職場の愚痴を吐いていた。それを聞きながら、それでもなお早く仕事がしたいと言い張る私は本当に子どもみたいで、家に帰ってきた今でも、情けないというか、憤りを感じている。

別に今すぐ社会に出て働きたいとは思っていない。ただ、夢も目標も何もなく、漠然と大学生活を送っている自分が嫌なだけ。自分を卑下することが板についた。照りつける朝日に背を向けた。これが助けてくれたことなんて一度もないのに、性懲りもなくまた音楽を再生してしまう自分を、そのまま朝を迎えることを、カーテンが遮った日差しを、覚える、夏。ぐずついているだけの私を、一瞬で追い抜かすのはやめてくれないか。

 

せめて今、この曲が終わるまでは、外が明るくなりませんように。 相対性理論 - ミス・パラレルワールド

 

 

7/20(sat) 下北沢club251 CRYAMYを見た

 

多摩川とその河川敷を横断する、東急東横線多摩川駅新丸子駅間。多摩川駅を出発すると、電車は連結された車体を大きく右に曲げながら茂みのあいだを抜けて、濁った多摩川の上に出る。このときに感じる重力が好きだ。高校生の頃、この河川敷で花火をしたことがある。目の前の手持ち花火が放つ光の明るさはもう忘れてしまったけど、夜にそびえる高層ビルの明かりは確かに綺麗だった。真っ暗な車窓から僅かに見える川の水が反射しているのは、何の明かりなのかな。それが月だったなら、結構ロマンチックかもしれない。でも今日は生憎の曇天。せめて、人工でいいから、プラネタリウムのような美しい光を反射してくれないかな。ライブのあとはイヤホンをつけずに好きな音楽を脳内再生することが多い。このときはちょうど、それがプラネタリウムだった。

 

高校生の頃のことを思い出してしまったのは、この日の昼間に珍しく高校野球を見たせいだろう。三つ下の従兄弟にとって最後の夏らしく、家で中継が流れていた。両親の必死の応援もむなしくベスト8敗退。まあ、仕方がない。お父さんとお母さんはそのままベイスターズの応援に横浜スタジアムに行き、私は少しダラダラしてから下北沢へ。club251、初めて行くライブハウスである。ベースメントバーや下北沢スリーに行くときに通る道にあって、外見は何度も見たことがあるけど入るのは初めてだった。

18時過ぎに着くと、ライブハウスの前に人がたくさんいた。CRYAMYのワンマンライブしかり、PKshampooのリリースツアー新代田フィーバーしかり、最近はこういうシチュエーションが多い。整理番号を呼ばれて中に入ると、前から真ん中くらいまではもう人で埋まっていた。私の整理番号がまあまあ遅かったせいもあるけど、この日の対バンが私でもわかるくらい豪華だったからなんだろうと思う。CRYAMY、Suspended 4th、w.o.d.、No buses。このバンド名の並びだけ威圧感がすごい。普段は目当てのバンド以外は見ないことが多いけど、一番手のCRYAMYを見たら後ろのほうでお酒でも飲みながら後の3バンドをゆっくり楽しもうと思っていた。

 

開演の時間は10分くらい押したのかな。BGMが鳴りやんで(そういえば、最近授業でBGM(音楽)と心の関係についての論文を読んだ。内容というよりは分析の方法とかを勉強するものだったから研究の結果は「だろうな」という感じで大した発見も面白みもなかったし、そもそも研究自体にムラがありすぎて「これどうなん?」という感じだったけど、音楽で人の気分が上がったり心を落ち着かせたりできるのはまあまあ確からしい)、オオモリさんを筆頭にCRYAMYの四人が出てくる。フジタレイさんの金髪が、照明に照らされてすごく綺麗に見えた。四人が出揃うと、いつもの如く耳をつんざくようなノイズが鳴ったんだけど、そこから一向に進まない。カワノさんのギターがトラブっていたみたいだった。スタッフさんの小走りが横目に見えて、こっちまで少し緊張してしまう。そのあとちゃんと音が出て無事一曲目のtenが始まったので安心、途中のMCでカワノさんが「ギター壊れてなくてよかった」と笑っていたのもなんだか微笑ましく思えてしまった。

最近、ライブでの普通の出だしがめちゃくちゃカッコよくて困ってしまう。この日もそうだったんだけど、最初のカワノさんのギターの前になんかカッコいい演奏があって(説明が下手で恥ずかしい。伝わってくれ)、それがもう本当に、すごく良い。そのあとにくるいつものカワノさんのギターがスッと落ちてきて、ピー!という音と同時に一気に突き抜ける感じ、たまらない。カッコいい。カッコよすぎて困る。そのままcrybabyで押し切ったのは力業感があったけど、ステージから客席に倒れ込むカワノさんに引き寄せられるように前方の密度と拳が一気に上がったのは、なんだか気持ちがよかった。この日のCRYAMYはパワーがあるように見えた。私はもう、ただただ圧倒されるばかりだった。

MCを挟んでピンク、物臭。PKshampooのライブで京都線を聴いたときにも思ったけど、物臭とか、月面旅行とか、プラネタリウムとか、そこまでテンポが速くなくても右手を挙げたくなるような曲は、本当に良い曲なんだなぁと思う。カワノさんは「あなたが言うようなそれなりもないよ特別もないし」とマイクに向かって吐き出していた。見もしない知らない"誰か"が言うような"劇的"や"特別"より、いま目の前にいる"あなた"が言う"それなり"を"誰か"にも"あなた"にも歌おうとするサビの歌詞、すごく好き。物臭の歌詞は最強だ…。それなりにも特別にもなれなかった歌詞に綺麗なメロディーがくっついた、この夏一番のヘビロテ曲。結局夏なんて、私にとっては長い長い夏休みがある分惰性に拍車がかかるだけの季節だ。夕方に起きて朝に寝る生活が目に見えている。そんな夏の中で、最大の活動時間となるであろう夜、暑いのに毛布を被る夜、蒸し暑いバイト帰りの夜、お酒を飲んでフラフラのまま家に辿り着く夜、この曲があれば、少しはジメっと纏わりつく空気も美化できるんじゃないかな。少なくとも私はそうだ。底辺大学生の、ここに書けるようなことなんて何一つないダメダメな生活も、そんな夏も、CRYAMYが、物臭が、少しだけ、拾ってくれると思っている。

「俺みたいにならないように幸せになってくださいって言ってたけど、俺みたいに幸せになってくださいって言えるように、幸せになりたい」と言ったカワノさんのMCに、少し胸が熱くなった。そのあと「来るだろうな」と思っていたらやっぱりきた、月面旅行とプラネタリウム。本当に良い曲だ、敵わん…。そういえば、この前の新代田フィーバーでカワノさんは「月になる」と言っていたけど、確かに、CRYAMYは海というよりは月っぽい。じゃあ私は何になろうか。いや、何にもなれないな、私は私か。「笑って息してたらよかったのに」のあとのサビ前で一拍置くところがたまらなく好き。ここまでの歌詞があまりにも赤裸々で苦しい気持ちになるから、一瞬だけ下を向く時間になる。私が死んだらCRYAMYも死ぬかな。少なくとも私の中のCRYAMYは死ぬかな。じゃあやっぱり、死にたくないな。

 

この日のCRYAMYはなんだかすごくカッコよかった。終わったあと、前日も飲みにいったことを考慮して結局控えめにウーロン茶を飲みながらCRYAMYのあとのSuspended4thを見ていたけど、CRYAMYがカッコよすぎて満足したので途中で帰った。あと人がたくさんいたので居心地が悪かった。あとCRYAMYよりもSuspended4thで盛り上がっているお客さんを見るのが嫌だった。

最寄り駅に着いて、やっぱりお酒が飲みたくなってしまったので缶チューハイを買って帰った。これを書きながら飲んでいたけど、どうしても飲み足りなくて、もう一度買いに出る。今月はお金がないというのに。最近の東京は曇り空が続いているけど、次晴れるのはいつだろう。晴れていなくても星空が浮かぶプラネタリウムは、やっぱり優しい曲だ。

 

 

6/28(fri) 下北沢DaisyBar 「crybaby」リリースツアーアンコールワンマンライブ "CRYAMYとわたし。"

 

6月28日の朝、おばあちゃんの訃報を受けたのは遅延している電車をホームで待っているときだった。青森県の最北端に住むおばあちゃんには、最近はもう年に一度会うか会わないかなので、その知らせを聞いても実感が湧かないというのが正直なところ。10分遅れで到着した電車に乗り込むといつもよりかなり混雑していて、湿気のせいもあり私の気持ちはすぐに苛立ちへと変わった。大学生あるあるだと思うけど、遅刻が確定すると急に何もかもどうでもよくなる。学校に着いて、心なしかいつもより少し堂々と教室の扉を開けると、静まり返る室内でちらほらとこちらを向く人がいた。湿気で嫌な匂いがする。この大学は女子しかいないというのになぜこんなに異様な匂いがするんだと思うと、またイライラが増してきた。席に着いてから、バイト先の店長に葬儀のため何日と何日にバイトを休むと連絡を入れて、すぐに机に突っ伏す。諸々の感情が重なって顔を上げていられない。と、言いつつ、考えることは「今日ってライブ行っていいのかな」ということだけだった。

まあ、いいや、だいぶだいぶ悩んだ結果、これを書いているくらいなのでライブには行った。こんな私情は話すと長くなるからそのことはライブの感想とともに少しずつ書き起こしたい。世界一カッコいいバンドのカッコよさとか男らしさも言葉にして伝えないと勿体ない。セットリストはさすがに覚えていなかったのでSNSで「CRYAMY」と検索して拝見させてもらいました。

 

CRYAMY初のワンマンライブとなった「CRYAMYとわたし。」は、19時開場19時45分開演で、比較的スロースタートだった。私は午前中に学校が終わっていたので、一度家に帰ってきて、ご飯を食べて、仮眠(昼寝)をとって、シャワーを浴びる余裕まであった。結局時間がありすぎて逆にゆっくり準備してしまい、一本電車を逃してしまったけど。デイジーバーに着いたのは開場時間の10分前くらいで、もうすでにそこそこの人が集まっていた。ちょうど19時に入場が始まり、整理番号に従って私も中へ。外でドリンク代を払っていたときから聴こえていたんだけど、フロアに入ると結構な音量でバンプの天体観測が流れていて、私はバンプが大好きなので少し、いや、だいぶ気分が上がった。後ろのほうで見るか前のほうで見るか迷っていたはずだったのに、自然と足が前へ前へ動いてしまい、結局前から4列目くらいのところに位置取る。天体観測の他にも、Titleofmine、ハルジオン、ベルなど、アルバム「jupiter」の曲がしばらく流れていた。そのあとに流れた洋楽はほとんど(全部かな)知らない曲だったけど、私はずっと大音量のBGMを聴いていた。そうこうしているあいだに19時40分をすぎ、前にいた女の子がスマホをしまったので私も鞄の中に入れて、ただステージを眺める。それからしばらく、体感では約7、8分ほどで会場の電気が消えた。

 

普段より何倍も大きい拍手が鳴り響く。私の掌もなかなかいい音が出ていた。いつものSEでオオモリさんから順番に登場、と思い込んでいたんだけど、流れてきたのは久石譲のsummerだった(カワノさんのInstagram参照)。なぜか笑えてしまう、楽しい。久石譲が流れただけで楽しい。朝から決していい気分ではなかったけど、私はこの日のライブを2ヶ月前から本当にずっと楽しみにしていたのだ。その音楽に合わせてオオモリさん、フジタレイさん、タカハシさんと登場し、カワノさんを待っていると、どこからか「よろしくお願いしまーす!」という声がした。後ろから聞こえるざわめきに振り返ると、カワノさんが人混みを掻き分けて前に迫ってきていた。驚いたし、笑えたし、なんのサプライズかと思ったけど、いろんな人の手を握ったり抱き合ったりしながら前に進むカワノさんが誰よりもいい顔をしていたので、「今日は来てよかった」ともう既に思ってしまっていた。最前までたどり着いたところで、誰かに担がれながらカワノさんが柵を飛び越える。ステージに立ってギターを持ちそれを鳴らす姿は、今まで見た中で一番カッコよかった。

 

一曲目はtenだった。始まるとすぐにタカハシさんが前に出てきてフロアから伸びる手とハイタッチをしだして、私もしたかったから手を伸ばしたけど一歩間に合わず。でもその手は挙げっぱなしのまま、爆音のギターと心臓まで響くドラム、叫ぶような歌声とタカハシさんのコーラスを聴いていた。良い曲だ。良い曲すぎる。後ろから押されたり隣から押されたりと大変だったけど、お客さんもそれぞれ違う動きをしていたのが、いい意味で一体感がなくてなんとなく安心した。二曲目はsonicpopで疾走感を高めて、三曲目の普通は一気に地を這う力強さを生み出す。それに、自分でもビックリだけど、この曲で私は生まれて初めてレベルの大声でサビの最後の歌詞("見つめるような癖")を熱唱してしまった。冷静になって考えてみれば周りの人に「ほんとすみません…」という気持ちではあるけど、あの爆音の中では私がどれほど大声で歌ったってマイクを通したカワノさんの声が聞こえなくなることはないと思うから多目に見てほしい。私も誰かの何かが思いっきり頭に当たってなかなか痛かったけどそれも多目に見るから。普通の途中で、カワノさんは客席に飛び込んでみんなの上に乗りながら後ろのほうまで行き、見えなくなった頃にまた上から帰ってきた。そのあとのMCで「さっき後ろのほうまで見に行ったけど…、見に行った?けど…」と照れ臭そうに笑っていたのも印象的だった。MCは3、4曲ごとに一回のペースで挟まれていたんだけど、どこでどのMCをしたのかが少し曖昧なので、これは書きたい順番に書く。でも、このときのMCではただひたすら「ありがとうございます」と言っていた気がする。こちらこそ、だ。4/20にやったリリースパーティーと同じで、「言いたいことは先に言っちゃいます」と言ってたくさん感謝を述べていた。こんなに激しく演奏したあとにほっこりした気持ちにさせられたので、気持ちがなかなか追いつかない。そんなMCから話はまた少し変わっていき、四曲目のビネガーは「俺のゲロの味です」と言って始まったので、また気持ちが180度回った。ビネガーはずっとサウンドクラウドで聴いていたので、イントロの「ワン、ツー、スリー」がこの日も頭の中で勝手に聞こえた。良い曲だ。CRYAMYの曲にコメントをするなら、私はもれなく全てに「良い曲」と入れると思う。だって良い曲なんだもん。五曲目の正常位も六曲目のtwistedも全部全部。twistedでのタカハシさんのコーラスが本当に綺麗で大好きなので、もし再録することがあればぜひ入れてほしい。そういえば、MCでカワノさんが「チューニングするからたかしこ喋ってて」と言ってMCをタカハシさんに投げた時、彼は困ったように髪の毛をくしゃくしゃするだけで結局一言も喋らず、カワノさんに「頼むよ~」と嘆かれていて、なんだか微笑ましい光景だった。

 

八曲目はイージリー。この曲は前々日の下北沢近松で初披露だったのかな?カワノさんのサウンドクラウドの中でもとくに好きな曲だ。初めてバンドでのsonicpopや月面旅行、プラネタリウムを聴いたときもそう思ったけど、こうやってずっとカワノさんの歌声とギターだけで聴いていたものがバンドで鳴らされていると、なぜか私が嬉しい気持ちになる。「あなたが仮に不幸になったって~」の部分からのオオモリさんのドラムが好きだった。九曲目のpink、全体的には倦怠感のあるサウンドなのに、間奏でのレイさんのギターは、…なんていうんだろう、こういうときにギターやバンドに詳しければポンと言葉が出てくるのになぁと思う。わかりやすく言えばバチバチで(わかりやすいのか?ニュアンスで感じ取ってほしい…)、わかりにくく言えばナイフみたいだ。pinkはCRYAMYの中でもかなり好き。それぞれの音が気づかないところでパキッと合致しているイメージ。この例えも驚くほどわかりづらいが…。歌詞もセンス抜群。あとタカハシさんのコーラスも良い。私はタカハシさんのコーラスがマジで好きだ。声も綺麗だし。そのあとの雨からのdelayの流れは(安っぽい言葉だけど)さすがに感動してしまった…。delayは、カワノさんが物臭を捧げたダンくんに最後に聴かせた曲だったらしい。ダンくんの反応はイマイチだったみたいだけど、私はすごく好きな曲だ。#3には必ず入れてほしい。必ず。この曲は歌詞を見ながら聴きたい。

 

カワノさんはMCで「今すごく幸せな人はもっと幸せになるように、今すごく不幸な人は少しでも幸せになれるように、不幸でも幸せでもない人はすごく幸せになれるようにする」と、「俺がなんとかするから」と、「俺は男だから言う、俺に任せろ」と、頼もしいセリフを何度も繰り返していた。「今年中に#3を出す」とも宣言していて、その姿はなかなかカッコいい男だった。プラネタリウムでカワノさんがステージの柵を超えてきたとき、「こんな地下のライブハウスで天井を触りながら夜空を歌うのか」と思った。だけど、人工的な星の光は、曇っていたって天井があったって例え地下だってそれを綺麗に作り出せる。CRYAMYで初めて優しい曲を聴いた気がした。優しい曲だ。言わせてもらうが、わたしたちだって、あの場にいたみんな、CRYAMYの幸せを願っている。わたしたちがなんとかするから幸せになってほしい。でも、カワノさんは最初のほうのMCで、ソールドアウトした初のワンマンライブに「普通のバンドは"俺たちはこれじゃ満足しないから~"とか言うのかもしれないけど、俺は満足です」と心底安心したような笑顔で言っていたので、なんか幸せそうでよかった。

 

この日のディスタンスを、私は一生忘れないし、忘れたくない。「死ななくてよかった~…これからみんなになんでもしてあげられる」と、カワノさんは掠れた声でそう言った。またステージから体を乗り出して客席に手を伸ばすカワノさん(4/20のときもそうだったが、この日も幾度となくこういうシーンがあった)、握ったその手はビックリするほど冷たかったけど、強く力を込めて握り返してくれた。「あなたを思って枯らす涙は戻らないけどあなたも戻らないから、ってさ」サビの歌詞はたったこれだけだけど、これだけで十分である。どうとでも解釈できるし、誰にでも伝わる。私はこの曲でもう感情がぐちゃぐちゃになって、白状しますと、次から次へと出てくる涙を(後ろからの圧のせいもあり)目の前にいたお兄さんの背中で拭いた。ごめんなさい。たぶん白いTシャツに化粧ついてます。本当にすみませんでした。次のcrybabyの「自分の心はゴミみたいに思えた」という歌詞は、序盤の普通より私はまた一段と大きな声で叫び散らかしてしまったんだけど、隣からの声も後ろからの声もカワノさんの声も全部フルスロットで聴こえたのでよかった。この辺りからはたぶんもう、後方はわからないけど私がいた前の方はめちゃくちゃで、くちゃくちゃで、壊れた自分の心もゴミ"みたい"なだけであって、でもそれはその後のtenで「そんなんでもいいでしょう」と肯定された気がした。そんなんでいいのだろうか。私はずっと、大人になって立派になって賢くなって優しくなりたかったんだけど、全然なれてないんだけど、こんな私をおばあちゃんは認めてくれるのかな。舌癌になって食べられなくなって喋れなくなって笑えなくなって、それでも私をちゃんと覚えていてくれる、部屋の壁に私の写真を貼っていてくれる、おばあちゃんに、私は一ミリも立派な姿を見せてあげられなかった。「そんなんでもいい」とはやっぱり思えないけど、化粧をした綺麗な寝顔のおばあちゃんを前に、孫の私が娘であるお母さんよりも泣いてしまったことくらいは、「そんなんでもいい」と思っていいかな。涙を堪えるのは得意だと思っていたけど、私は案外泣き虫だったみたいだ。まあ考えてみればライブも私は泣きじゃくりすぎた。強くなりたいね。

 

二度目のtenが本編最後となり、アンコールではテリトリアル、そしてダブルアンコールまで応えてくれて、カワノさんがエレキギターでtenを弾き語りした。さすがに普段の倍以上長い間やっていたのでカワノさんの声も掠れていたけど、その掠れた高音は飾らない綺麗さがあった。一度目のアンコールのあとかな、最後にオオモリさんとレイさんが大きな声で「ありがとう」と言ってくれたのが嬉しかった。こちらこそありがとうございます。#3もフルアルバムもいつか出るかもしれない"名盤"も、ずっと楽しみに待っている。

「物臭」へ

 

月曜日の大学は午後からの二コマ。それも特段苦手な英語の授業が連続でふたつ続いていて、今日はどうしても行く気になれなかった。仕度を済ませ家を出て、電車には乗るものの、結局最寄りの一つ隣の駅で降りて紀伊国屋に向かった。

日差しが暑い。夏が来るのだろうか。そろそろ日焼け止めを買わなければならない。母の日にプレゼントしたシトラスの香りがする日焼け止めスプレー、ちょっとくれないかな。今月はお金がない。今週は二件お誘いがあるけど給料日までは程遠い。お金がないくせに読みたい本はある。期限が切れたZOZOTOWNの支払いを後回しにしてまで飲んだお酒や買ったCDに意味があったのかはわからないけど、誰も肯定してくれないなら自力で意味を見出だすしかないのだ。紀伊国屋で購入した値段分の重さがあるこの大判の新書に、私はそれ以上の重みを感じられるだろうか。そのあと立ち寄ったサンマルクカフェに私は一人で三時間も滞在したのに、一度も本は開かなかった。

 

本を読まない私は言葉を知らなくて、この曲に出会うまで「物臭」の文字には馴染みがなかった。曲名のとおり、出てくるフレーズや浮かぶ情景は後ろ向きで湿った日常。今にもほどけそうな緩い靴紐に気づいたときのような、上着のポケットに入れっぱなしになった十数円の小銭を握ったときのような、小さい憂鬱がいくつもいくつも積み重なって、動けなくなる。本当は全部ここにあるのに、遠く先にある何かを掴まないといけない感覚に陥る。物臭の歌詞はそれがすべて現れている。"本当"というのは汚いけど綺麗なものだし、綺麗に思えるけど実は醜いものだったりもする。結局それを綺麗に映すかどうかは見る側次第で、そんな物臭の歌詞を綺麗だと美化するのも聴き手側、私次第なのだ。私はトイレットペーパーを友達に買ってきてもらうことはないし、買ってもらったテレビを売ったこともない。薬局で缶チューハイは買わないし、その空き缶を灰皿として使いもしない、そもそも喫煙もしない。だけどどうだろう、遊び呆けて朝方に帰宅しても親が鍵を開けておいてくれること、お世話になった先輩に大層な文句を言い付けたこと、友達を裏切ったこと、後輩を妬んだこと、志望校をひとつ落としたこと、学校をサボったこと、バキバキに割れたスマホの画面を修理に出さないこと、ZOZOTOWNの付け払いを払わないこと、買った本を読まないこと。出てくる後悔、憂鬱、怠惰、小さくても積み重なってそれが大きなプレッシャーになる。そうしているうちに些細な苛立ちに蝕まれていって、結局、取り返しのつかないところまできてしまう。物臭の歌詞は、そうやって私が背を向けたところで知らないうちにリンクして、後ろ髪を引っ張られ、引き戻される。こんな日常は綺麗とは言えない。物臭の歌詞は美化できない。聴けば聴くほど、部室が並んだカビ臭い廊下を思い出す。土の匂いが混ざった6月の湿った空気を思い出す。あの時野球部なんて選んでいなければ、私の後悔も少しは取り除けたかな、という、後悔。毎日のように嫌悪や憎悪を抱いた生活は、「最低」以外の何でもない。

でも、物臭には、音楽にはメロディーがある。それが一種のカタルシスというか、とりわけ、物臭はそれが暗い歌詞を良い方向へ導いてくれる。後悔は消えないから後悔だし、簡単に美化できるようなものでもあってほしくない。そんな軽いものを悔やんだつもりはない。それでも、憂鬱は憂鬱のままで、後悔は後悔のままで、それを鳴らすのはポップで優しいメロディー。だから、私は、物臭が綺麗だと思ってしまう。生活は思うように上手くいかない。寒いから見送りに出たくはない。誰かのために動けるような出来た人間じゃない。本当のことは綺麗とは言いがたいけど、本当を歌う歌はすごく綺麗だった。

結局のところ、物臭は良い曲なのだ。愛される歌だと思う。こんなポップソングが、ただ一人に伝わればと願う。歌なんていうのはずっと昔から「君」のことしか言われないし、それも大概が、会えない相手への恋文だし。

 

サンマルクカフェを出た頃にはもう日が落ちていた。物臭のミュージックビデオを見てすぐに帰ろうと思ったが、涼しい気温とまとわりつく湿った風がちょうど良いところで混ざりあっていたので、もう少しだけ歩くことにした。家の近くを通ったところで、街頭の灯りが変わっていることに気づく。オレンジ色の明かりから白っぽい色に変わっていた。誰が、いつ、替えたのだろう。

 

去年の秋、CRYAMYと出会ったとき、その時はまた別の意味で最低の生活をしていた。学校も行かず、バイトばかりで、彼女のいる男の子と遊んで、何も無かった。何も無かったのだ。#2に収録されたディスタンスを初めて聴いたのは10月の終わり頃で、私はその冬をディスタンスと一緒に越したと思っている。長い寒い厳しい冬は、越したのだ。何も咲かない時期はもう終えた。シーズンが開幕する春は嫌いだったけど、CRYAMYのおかげで好きになれた。この春にあったリリースパーティーは、私が冬を越す理由だった。そこで聴いた物臭は、特段綺麗だった。

この、あたたかい、湿った空気を帯びて歩く夏の夜は、物臭と一緒に越せる気がする。明日はちゃんと学校に行こう。音楽療法の授業がある。英語は嫌いだけど、この授業は楽しみにしていたのだ。この夏休みには集中講義も受ける。遠くにある何かを掴みたいから、目の前にあるものから拾っていかなければならない。

 

 

 

5/20

公開し忘れていた

 

ハイボール一缶で酔っぱらい、情けないし恥ずかしい。昨日バイト先の先輩が奢ってくれたウイスキーは私でも違いがわかるくらい飲みやすくて、おいしかった。それに比べて駅近くのスーパーで買った192円の角ハイボールは本当にただのハイボール

なんて、どうでもいいんだこんなことは。私は酒や煙草やセックスで退廃を匂わせたいわけじゃないし、拗れた恋愛模様を描く大衆文学もそれを実写化した映画も本当に興味ない。なんかもう本当にマジでその辺の女と一緒にしないでくれ!私は大人になりたいんだ。大人になって立派になって賢くなって優しくなって、憧れている人と並びたい。人の役に立ちたい。必要とされたい。聖母のような心を持ちたい。結局いまだにそんなことを思ってしまいますね~。というか全然関係ないけどこの場を借りて最近マジで思ってること言ってもいいですか?公共の場で靴を脱ぐ人なんなの?本当にやめてほしい。おまえの素足も靴下の裏も見たくない。見なきゃいいとかじゃない、見えるんだよ。飲食店で靴脱ぐの本当にやめてください…。普通にマナー違反、行儀悪すぎる。でもこんなこと思うんじゃ聖母には程遠いんだよな…。まあ、ともかく、それでもこの土日は濃厚だったので日記的なハイライト的な。

 

5/18(土)

Hue'sのライブに行った。すごく、すごーーーく良かった。私はあまり演奏面の技術とか構成のことはわからないけどHue'sはそれが良いんだろうということはわかるし、正直、Hue'sを好きな自分センスある…と思ってたりする。この日は一曲目からYouthで、ということはつまり世界の終わりからで、めちゃくちゃにカッコ良かった。SEが落ち着いた感じの音楽だからそこからの高低差が本当にもう。マジでカッコいい。見れば見るほど、見るたびに"良い"が増していく。Hue'sの前のバンドがosageで、osageのレコ発にCRYAMYを見に行ったときはライブを見ずに帰っちゃったから今回はちゃんと見たんだけど(カワノさんはosage好きらしいし)、良かった。とくに新曲と言っていた曲が好きだった。でも、osageが終わったあとにフロアからだいぶお客さんが引いちゃったのがなんでか少し悔しかった。これからめっちゃ良いバンドが始まるのに!という気持ち。でもその代わりカワノさんとフジタレイさんとオオモリさんが前に出てきた。Hue'sを好きになったきっかけは間違いなくCRYAMYなので本当にありがとうございますという所存。

そのあとは夏を待っている、vacation、Luka、ベランダ、かな、たしか。夏を待っている、マジで良い曲。新譜の中で一番好き。あとはやっぱりベランダだなぁ。何度聴いても間奏が良すぎる。何度と言っても2回しか聴いたことないですが…。6月にHue'sとCRYAMYの対バン楽しみだなぁ。でも、Hue'sのライブ中のCRYAMYメンバーを見ていると、本人たちが一番楽しみにしているんだろうなぁと思う。少し前に某バンド(別に隠す必要もないか。ハルカミライ)がライブのMCかなんかで「バンドは友情だ」と言っていたらしくて、私はそれを友達から聞いたときは「何が」と思ったけど、案外、本当にそうなのかもしれない。

家に帰る前に友達に誘われたので合流して、暗い川沿いを歩きながら二人でしっぽり。なんだか珍しく真面目に話してしまって、私はベラベラと近い将来のことを語りながらこんなことを思っていたんだと自分でも少し驚いた。友達はもう社会人として働きはじめているけど、やりたいことや目標があるみたいでいろいろとちゃんと考えていて、なんかすごいなぁと思った。その点、私は、やりたいことがあって今の大学今の学科に来たのはずなのに、いつのまにかその気持ちがなくなっている。というか、別にもともとそんなにやりたかったわけでもなかったんだろうな。諦めて、ヘラヘラして、バイトして、音楽聴いて、生産性のない日々を過ごしてしまっているけど、最近なんとなくやりたいことが漠然とだけど見えてきたみたいだ。それは今の学科じゃないとできないことだから、根本としては結局あまり変わっていないのかも。とりあえず今度の就職説明会、ただ行くだけにならない気がしてきた。よかった。

 

5/19(日)

この日は、下北沢のタワーレコードでカワノさんの弾き語り。カワノさんの弾き語りは予定が合わずに毎回行けないことが多かったので、わりと久しぶりだった。クリスマスの渋谷タワレコ以来かな。最初はシングルのcrybabyの曲順で、ピンクからtenまでを少しだけ説明しながら4曲全部歌った。crybaby、怪我が原因で野球をやめてしまった後輩(に向けた?)の曲らしい。野球が好きだったのかな。いつ、どんな怪我をしたんだろう。野球をやってる人は野球しかできない、みたいなところがあるから、やめちゃったのは結構大きい出来事かもしれない。高校時代に野球部のマネージャーをやっていた身としてはそう思う。私ですら、高校3年生の夏に負けたときは悔しさと虚無感で一ヶ月くらい何もできなかった。本当に何もしていない。受験勉強もしてないし遊び呆けたわけでもない、ただ一日中テレビの前に張り付いてオリンピックを見ていた。甲子園なんて一切見ていない。甲子園は今でも見ないし、うちは私以外家族みんなベイスターズファンだけど私は無理、正直もう金輪際野球とは関わりたくない。だからカワノさんの口から「野球をやめた」という言葉が出てきたときはドキッとした。「誰の話?私?いやいや、後輩」という感じで一瞬本気で焦った。どこまでいってもCRYAMYの曲はそうやって、なんというか、私高校時代のこと忘れたいのに、CRYAMYは逆に思い出すような曲ばかり。だからもう忘れるのはやめたし、こうやって書いている。後輩、いま何をしてるのか知らないけど、野球やめたって人生どうにだってなるから腐らないでほしい、と言いつつ、私も野球しかないって人をたくさん見てきたから何も言えない。何も言えないんだよなぁ。こういうときに、何か、言える人間になりたかった。選手が怪我したときも、監督に怒られたときも、メンバー外れたときも、試合に負けたときも、私は何も言ってあげられなかったし、同じように泣くばかり。下手なこと言って怒らせたことすらある。気がつかえる、人の心がわかる、優しい人になりたいと思ったのはその時だ。カワノさんもこの日言ってたけど、私も優しい人になりたいよ。というか、自分を犠牲にしてまで誰かのためにならないと自分の存在価値がわからない。自分のために誰かに優しくする、ワケわからんけど本音はそこにある。最後にやったプラネタリウムはとても良かった。バンドで聴きたい。ガーデンでやってくれちゃったりするのかな?それとも、ワンマンまでとっておくのかな。

 

とにかくこの二日間、将来のことと過去のことを考えたり思い出したりした。なかなか濃かった。来週のサウクルCRYAMY下北沢ガーデン、めちゃくちゃ楽しみにしてる。

 

5/25(sat) 下北沢GARDEN CRYAMYを見た

 

5/25 下北沢サウンドクルージング

朝目が覚めると体調がすこぶる悪かった。頭痛にやんわりとした吐き気、頭がボーっとする、そんな体を無理やり起こして下北沢に向かった。

前々日くらいから体調が良いとは言えなかったのに、私はバイトをしたり朝まで飲んだりタピオカを食べたりしてしまって、全く体に気を遣わなかった結果がこの有り様。でもこの日はずっと楽しみにしていたサウクルなのだ。這いつくばってでもガーデンに行かないといけない理由がある。そこでデイタイムのトリを努めるCRYAMYを何がなんでも見たかった。思えば前日、ライブに行く話を友達にしたら何のバンドを見に行くんだと聞かれて、CRYAMYだと素直に言ったら「知らねー!」と一蹴りされてしまった。いいさいいさ、笑えばいい。私だってお前の好きな競馬のことなんて一切知らない。お互い我を忘れるくらい好きなものがあるなんていいじゃんね、自分たちにとって特別であればそれでいいんだ。それにCRYAMYはいつか絶対誰でも知ってるバンドになるから、そんなことを言われたって私は山賊に酒を浴びせられても平気でいるシャンクスくらい広い心で笑っていられる。

下北沢に着いたのは、12時半の少し前。リストバンドを交換して(リストバンドを腕に巻いてくれたお兄さんがイケメンだった。腕の毛ちゃんと剃っててよかったー)最初に向かったのは下北沢レグ。トップバッターとなる2を見に行った。この頃にはもう体調は気にならないほどになっていて安心。結局この日は2とROKIと時速とペリカン、そしてCRYAMYを見たんだけど、最悪2とCRYAMYさえ見れればいいと思っていたところもあった。本当はPKshampooも見たかったんだけど、出番がCRYAMYの直前のデイジーバーだし、カワノさんが今はなきツイッターで「リハとかない。音出しから全力でやる」みたいなことを言っていて、それを全部見たかったので、PKshampooは7月のツアーまでとっておくことにした。あとあとSNSで反応を見てみると入場規制のうえにすごく良いライブだったみたいで…。でも後悔はない、ひとつ前のバンドからずっとガーデンにいたからCRYAMYはあんなに広い会場の前の方で見れたんだ。嬉しい~。

 

本当は2のルシファーが死ぬほどカッコよかったこととかそこにPKのにしけんさんがいたこととか、時速の仲川さんがバンプのTシャツを着ていたこととか初めて見たペリカンがすごく良かったこととかいろいろ書きたいんだけど、長くなってしまう(すでに長い)のでCRYAMYだけ。というか、トリのCRYAMYに全部持っていかれたので正直それまでの経過を忘れてしまった。CRYAMYさえ記憶が曖昧なので…。

 

CRYAMYの前にガーデンでやっていたバンドはHaloat四畳半で、たぶんサウクルに来るような人なら誰でも知っているバンドだと思う。このあいだ、バイト先にHaloat四畳半のiPhoneケースを付けているお客さんが来たくらいだ(ちなみにその日はマンウィズのライブがあったのかわからないが、そのTシャツやらなにやらを纏ったお客さんも来ていた)。Haloat四畳半のときもお客さんはたくさんいたものの"ぎっしり"という雰囲気ではなくて、そもそも入った瞬間から広々とした空間に驚いたし、「これは大丈夫なのか…?」と柄にもなく少しCRYAMYの出番が不安になってしまった。でもカワノさんいわくこれは賭博で、勝ったら気持ちがいいらしい。もう賭けるしかない。ベット!

Haloat四畳半が終わると、前から後ろに流れていく人たちを掻き分けて前方、ベース側へ。本当に広い。それに比例して、ステージも少し高い。音を調節しているあいだに、PKshampooを見に行っていたであろう人たちが続々と入ってきた。前の方にいたので後ろがどのくらい入っていてどのくらい空いているのかがわからなかった。気になって何度か後ろ振り返ったけど、真後ろにいた男の人に迷惑そうな顔をされたので途中からはそれもやめて、目の前のCRYAMYに集中することに決めた。

リハーサルは、普通とtwistedだった。普通のイントロの最初だけタカハシさんのベースの音が出ていなくて気づいたんだけど、なんというか、ベースって大切なのかもしれない。ベースがある音に聴き慣れているからなのかわからないが、ベースがないと音がカスカスだった。そんなことはバンドをやっていたり聴いている人からすれば当たり前の話なのかもしれないが、私にとってはかなりの発見。今まではバンドを聴かない友達に「ベースってなに?」「ベースいる?」と聞かれても上手く答えられなかったけど、これからはちゃんと答えられる。ベースがないとなんか変だったし。普通のあとtwistedをやってから、「よろしくお願いします」と残して一度捌けた。その直後、オレンジスパイニクラブ(らしい)の面々がやってきて、カワノさんの名前を叫んだり「愛してるよ~!」なんて言ったりしていた。普通に酔っているように見えた。でも、そういうことを私は言いたくても言えないしたぶんみんなそうだから、そうやって叫んでいるのを聞いて少し気分が良かったりもした。

それから照明が落ちるまではそんなに長くなかった。SEが鳴り始めて、いつもどおり、オオモリさんからタカハシさん、フジタレイさん、カワノさんと順番に登場する。四人を向かえる拍手、怒号、なんだか人気のバンドのライブが始まる瞬間みたいで、もしかしたら本当にCRYAMYは私たちのアイドルなのかもしれないなんて思った。

耳をつんざくようなノイズと同時にステージが明るくなると、一曲目のcrybabyが始まった。すると後ろからドッと人(たぶんオレスパ)が押し寄せてきて、軽くモッシュのようなものが起こる。私はもう楽しくて楽しくて。リリースパーティーでの一曲目もたぶん同じような感じだったんだろうけどその時は泣くことしかできなかったので、こんなに楽しくて仕方がない、バカみたいに笑っていられるライブはCRYAMYでは初めて。あと、タカハシさんの叫んでいる声をこの爆音の中で初めて聞くことができたので嬉しかった。二曲目はディスタンス。最初のオオモリさんのドラムと、そこからの"ジャーンジャーンジャーン"が持つ力がすごい。勢いと強さの他に何を込めればあの音だけでここまで響いてくるのだろう。その勢いが余って必ず少し上擦ってしまうカワノさんの歌い出しまでずっと耳に残っている。序盤二曲目のディスタンスいいなぁ。その勢いのまま三曲目tenへ。カワノさんはまたダイブしていた。PKshampooのヤマトパンクスや、CRYAMYをこのガーデンのトリに推してくれた龍ノ平さんまでステージから飛んできていて、嬉しい楽しい最高。この序盤三曲の疾走感が尋常ではなくて、体感的にはものの十数秒というくらい。tenが終わるとMCを挟み、中盤はpink、物臭、雨と続いた。pinkのときだったかな、たしかその辺りで、フジタレイさんがカワノさんとタカハシさんに突き飛ばされて客席に飛び込んでいた。結構すごい勢いで、そのときにギターの弦が切れてしまった(らしく)、時速の仲川さんが急遽替えのギターを持ってきてくれていた(らしい)。この日時速のライブも見たけど、そのとき仲川さんはMCで「友達のCRYAMYってバンドがガーデンに出るんですよ、すごいですよね、嬉しいなぁ」と言っていたので、なんだか胸が熱くなった。暴れればいいというわけではないんだろうけど、結局そういう気持ちが現れる高ぶったライブというかそういう演奏が私は好きだし、たぶんみんなそうだと思う。だってロックバンドだし。Haloat四畳半がアイドルみたいな笑顔で「ロックバンド代表として来ました!」なんて言っていたけど、アイドル枠でガーデンのトリにぶち込まれたCRYAMYのピコピコピーというギターの音と不器用な笑顔のほうが断然ロックバンドだった。

なんかあまり覚えていないけど、たぶん雨が終わってからもう一度MCを挟んで、月面旅行。月面旅行のバンドバージョンのイントロが大好きなので早急に音源化してほしいところである。とくにレイさんのギターのメロディーが優しくて好きだ(さっきからさらっと下の名前で呼んでしまっていて恥ずかしい)。そして新曲プラネタリウム。音楽を聴いているときは、その音楽と自分だけ。「わたしとあなただけ」という歌。"CRYAMYとわたし"である。この前の下北沢タワレコでの弾き語りでこの曲は月面旅行のアンサーソングだと言っていたけど、アンサーソングとはなんだろう。月面旅行にはどんなクエスチョンがあるのかすらまだよくわかっていないので難しいけど、いつかわかるといいな。

「CRYAMYとわたし」が何通りもできたところで、最後の曲テリトリアルへ。いつも言っているけどカワノさんが「好きな人に捧げた歌だったけど受け取ってもらえなかったからみんなにあげます」とまた言っていた。最初にサビの「簡単なこと言えやしないよ」の部分からをカワノさんがアカペラで歌って、それからイントロに繋がる。個人的にはリリースパーティーのときよりもこの日のテリトリアルのほうが良かったというか、なんというか、「癒えないで痛ぇ」という歌詞があるけど、みんなその部分を大熱唱していて、みんな癒えずに痛い思いをしているのかなぁと思うと、そういう曲をくれたことが嬉しくなった。なんて言うんだろう、とにかく、私も笑顔とも泣き顔とも真顔とも言えない顔で「癒えないで痛ぇ~~!」なんて叫んでしまった。だって痛いし…。初めてこんなことを叫んだ気がする。悲しいことや辛いことがあっても簡単には泣けないし、そんなことワンワンと嘆いていられないし、でも消えないし…。だからせめてそれを一瞬でも解放できる機会をくれてありがとう~という感じ。爆発!ステージ上もステージ下も、もう全部ぐちゃぐちゃだった。忘れていたけどこの日のCRYAMYはサウクルで下北沢GARDEN、デイタイムのトリなのだ。最後カワノさんが天井にギターを突き刺そうとしていたのは笑ってしまったけど、そんなことをしなくたって私たちの中には完全に残っている。私は前の方にいたから後ろにいた人がどんな反応だったのかはわからないし結局賭博に勝ったのか負けたのかも謎だけど、この日誰よりも楽しんだ自信があるので私の勝ち、私の勝ちということはCRYAMYの勝ち。楽しかった~!あと、CRYAMYは広い会場が似合うなと思った。

ライブが終わったあとアンコールの手拍子が起きて、私ももう一度出てきてほしかったんだけど、サーキットだからやっぱり厳しいみたいだった。でも、出てきてくれることが決まってるアンコールよりも出てくるかどうかわからないアンコールのほうがドキドキして、私はそれすらも楽しかった。もう本当に楽しかった。来月のワンマンまで、また頑張れそうだ。

 

 

5/12(sun) 下北沢近松 CRYAMYを見た

 

5月12日日曜日、母の日だった。お昼は母の日ギフトを買いに近くのショッピングモールへ。いろいろ吟味した結果夏に向けたプレゼントを購入、家に帰ってお母さんにそれを渡して、それからすぐに家を出て今度は下北沢へ向かった。

近松に着いたのは18時過ぎ。ソールドアウトだからわかってはいたけどやっぱり人がたくさん並んでいて、もっと早く来ればよかったなぁと思いながら私もその最後尾についた。18時20分頃に中に入れたけど前の方はもう埋まっていたので、真ん中より少し後ろで待機。一組目の弾き語りが始まったのは18時半を5分ほど過ぎた頃だった。

 

CRYAMYは三番手だった。ここ3、4日くらい、カワノさんはSNSで負のオーラをプンプンに匂わせていたので(お金がないなど)、準備をしているときから少しドキドキしていた。音の調節を終えて一度捌けていつものSE(この曲、どうやらジョイディヴィジョンらしい。このあいだカワノさんがインスタで言っていた。名前しか、それもカワノさんの話でしか聞いたことない。実を言うとバンド名なのか個人名なのかもわかりません…あとで聴いてみる)で登場。今回はフジタレイさんから順番に、オオモリさん、タカハシさん、最後にカワノさんが出てきて、一曲目はテリトリアル。初っぱなから見事にお客さんを置いてけぼりにするような熱量だった。というか、最初に言っておきたい、この日は本当に激しくて荒々しくて(とくにカワノさんが)、でも、「これが私の好きなバンドなんだ」と誰かに見せたくなるような、そんなライブだった。テリトリアルの最中にカワノさんが客席に飛び込んで、私はよく見えなかったんだけど頭をぶつけてしまったみたいで、途中に頭(?)から血が出ていた。私はそれを見て、なんか、不謹慎なんだけど、簡単に言えば「やったれー」という気持ちになってしまった。私自身そんなに"ライブで暴れたい!"というタイプではないけど、暴れてるCRYAMYを見るのは好き。それにこの時私はあまり良い気分じゃなかったから、CRYAMYにいろいろぶち壊してほしい気持ちがあった。もっと言えばそんな気持ちなんか置きざりにしてほしかった。そう思うと、この日の一曲目がテリトリアルで良かった。というか、テリトリアル、一曲目がよく似合う。ピタッと当てはまった感覚。テリトリアルのあとの普通もそのあとのピンクもいつもよりどこか尖っていて、でもそれが妙に心地よかったし、そう感じたのは私だけじゃないと思う。この日出ていた他のバンドと比べるとCRYAMYだけ少し毛色が違うように思えたし、そういうのも含めて、なんて言うんだろう、まあとにかく、カッコよかったのだ。

MCを挟んで物臭、twisted。twistedでのタカハシさんのコーラスがいつもに増して素敵だった。最近twistedが好きでよく聴いている。月面旅行の次くらいに聴いている。#2のtwistedも好きなんだけど、なぜかいつもサウンドクラウドのデモ音源で聴いてしまう。すごく良い曲。あの何も纏っていない、剥き出しの感じがすごく好き。これはCRYAMYの曲全般に言えることだけど、twistedはラブソングである分それが如実にあらわれる。「起死回生の文言を響かせたいと願っても もういいんだもういいんだって優しい人が僕に言う」なんて、ラブソングのサビの歌詞じゃない。でもこれはラブソングなのだ。カワノさんが「ラブソングやります」と言うからそうなんだ。すごく良い。

最後の曲はcrybabyだったんだけど、この1分そこそこでなんかたくさんのことが起こっていた。まず最初、ひとつ前のディスタンスが終わり、ノイズに紛れてカワノさんが「泣くんじゃないよ、っていう歌です」と言って、crybabyが始まった。泣きそうになった。それは、裏返したら「今だけは泣いてもいい」という意味にも聞こえた。というのも、前の前の弾き語りと前のバンド、どちらも青春(?)の曲をやっていたんだけど、私はそれを聴いていてなんか気分が落ちていたから。いわゆる青春時代、何度自分に「泣くな」と言い聞かせたことか。何度それに失敗したことか。CRYAMYを好きだから、crybabyを知っているからそう思うだけなのかもしれないけど、この時のカワノさんの言葉はなんだかすごく優しかった。楽しくない時間を否定せず、肯定もせず、ただ歌ってくれる。だからCRYAMYが好きなんだ。サビに差し掛かるとカワノさんはギターを投げてマイクを握り、また客席にダイブ。いろんなことが一瞬すぎて、本当に、一回瞬きをする度に状況が変わっていって、あまりよく覚えていないけど、カワノさんが飛び込んだ先にはずっとノリノリでライブを見ていたお兄さんがいて、その人がカワノさんをしっかりキャッチして、なんか楽しそうで、柄にもなく私はそれがいいなぁと思ったりした。ステージに戻ったら戻ったでフジタレイさんがまたカワノさんを煽って、カワノさんがフジタレイさんに飛び蹴りをして、そのまままた客席へ。さっきまでカワノさんがいたステージ中央でフジタレイさんは笑顔でギターを鳴らす。CRYAMYの企画かと思うほどに暴れ倒していた。暴れるというのは、単にわちゃわちゃやるということではなくて、よくCRYAMYのライブで見かける女の子とか、拳を上げる男の子とか、この状況を楽しむ人とか、私とか、みたいな、そんな人たちを掻き回すようなライブ。もうなんか全部壊してほしい。忘れたくて忘れたくてたまらない毎日が過去にあって、でも、忘れたいけど忘れられないからもう一生忘れてやるもんかって、私は最近そう思う。裏返してやるもんか、ちゃんと表向けて私は私がそれでもちゃんと頑張ってきた証拠を残してあげたい。裏切っちゃった人もいたし今まで散々日々を裏返してきたけど、私はもうそんなのやめるんだ~。crybaby、今回のライブで私はこんな解釈になった。CRYAMYは本当に、ギターを持っている二人がよく暴れる。この日はとくにすごかった。悪く言ってしまえばめちゃくちゃだった気もするけど、オオモリさんとタカハシさんのリズムが曲を支えてくれた。この日のcrybabyは間違いなく、今までで一番カッコよかった。

それにしてもカワノさん、綺麗なドロップキックだったなぁ。

 

CRYAMYが終わったら外に出て、ジンジャーエールを飲んだ。ゴールデンウィークに飲み過ぎたので今週は禁酒。この日も本当は飲みに誘われたけど断って、家に帰ってお母さんの手作りハンバーグを食べた。本当に美味しかった。そういえば、私がキツかった時期、お母さんも一緒に頑張ってくれていた。だからこそ私はちゃんとその時期に胸を張らないといけないんだ。お母さん本当にありがとう~。

 

次はサウクル。CRYAMYはもちろん、2も楽しみ。ライブがすべてではないけど、その日しか見れないものがあると思うと、やっぱりできるだけたくさん行きたい。今回のライブを見て、改めてそう思った。

 

 

追記

なんかライブに満足して浮かれてたらPKshampooのツアー当たったのに支払い期限がこの日だったことを完全に忘れていて、思いっきり払い忘れてしまいました…アホすぎ…。