INDEX FOSSILS

好みの話じゃなくて、好きの話

10/18(fri) 下北沢SHELTER PKshampoo×CRYAMY 「RIOT」

 

大音量のボレロが鳴り止んで会場の明かりが消え、聴き慣れたポケモンのSEの中でPKshampooのメンバーが登場したとき、私は恐ろしいほど鳥肌が立った。四人が楽器を鳴らし始めてから少しした段階で一曲目が「奇跡」だと気づく。"まるで僕ら奇跡だ"から始まって、"君よ統計学上の人にならないで"で締まる歌詞が一貫して美しい。私はこの日はかなり後ろのほうにいたんだけど、奇跡が始まった瞬間にみんながワァッと体を前に乗り出して次々と手を挙げ始めたのが見ていてすごく印象的だった。PKshampooってこういうバンドだ。それこそ、奇跡のうえにある星を見ているというか、星のような人というか、ギリギリ手が届かない人、というか。なんかもう感覚的には神格化に程近いものがあるんだけど、でも私たちは彼らが人間だと知っているから、二曲目の「君の秘密になりたい」に妙な親近感を覚える。イントロの福島カイトさんのギターがすごく好き。私はこの曲はずっとトラッシュノイズバージョンのほうが好きだったんだけど(ずっとそっちを聴いていたからというのもある)、このギターのリフ(?)がアウトロで本当に良い味を出していて、PKshampooアレンジも悪くないな、あれ、いやむしろ、めちゃくちゃいいなって。でもやっぱり「星」から「空のオルゴール」の流れは奇跡みたいに星みたいに美しかった。こんなとき、君に、綺麗な言葉ひとつかけてやれたならって思う。こんなときに拳一つでもあげられたら、声一つでも出せたら、私は。「RIOT」暴動と言ってるのに、"二人手を繋げば怖くないよ"って、反則じゃないですか?その次の曲のタイトルは「天王寺減衰曲線」だったんだけど、ここまで、奇跡から天王寺減衰曲線まで、ほぼぶっ通しで一瞬だったのでそういう雰囲気で書いてみました。どうですか、この速度、伝わりましたか。

「過去は振り返らずに前を見る、っていう過去の曲をセルフカバーするという…」とヤマトさんが笑って始まった曲、「この部屋がマイナーセブンに埋まる頃」と言うらしい。Twitterを見てみてもみんな"マイナーセブン"としか言っていないから正式名がわかるまでにかなり時間がかかった。マイナーセブンって全然知らなかったけど「m7」のことなんだ。見たことあるぞこれ。なんかすごい、ヤマトパンクスっぽい曲名。私これたぶんすごく好きだ。この一度しか聴いていないのに「この部屋が~」のメロディーがずっと頭の中で繰り返されている。それとも、知らなかっただけで私が見たライブでやったりしてたのかな。次のアルバムかシングル、なんでもいいけど夜間通用口と天王寺減衰曲線とこの曲、すごく期待している。

マイナーセブン(確かにマイナーセブンって略したくなる)からの5曲は、それまでの5曲とは反対にスローモーションに感じた。神崎川は私がPKshampooの中で初めて知って初めて好きになった曲で、これこそ、ずーーっと昔から耳に馴染んでいたキラキラ星の音階が、全く新しいものに聴こえたりなんかして。まだ一度しか行ったことのない大阪を考えて、そこで生まれた曲がこんなふうに東京で鳴っていて、ここで育った私は天神橋なんて見たこともないのに、知っているような気がしてしまうのは何故なんだろう。そう思っていたら、次の新曲はこのツアー中に北海道でできたというから、北海道なんて行ったことないのに、なぜか、北海道で寝転がって空を眺めるヤマトパンクスが頭に浮かんだりする。曲は全然覚えてないけど、これから聴くたびに今日のことを思い出せるような気がして、少しその特別感が嬉しくあったりもしている。

最後の2曲、夜間通用口と京都線はもう前の方ぐちゃぐちゃ。夜間通用口のサビ前でヤマトさんが「手挙げてもらっていいですか?」と言っても私は組んだ腕が動かなくて、決してノってないわけじゃないしなんなら前後左右で私が一番ノリノリだったと思うけど、PKshampooのカッコよさに圧倒されて、腕を組んだまま両の袖をギュッと握り締めたてのひらだけがずっと汗で湿っている。それにこの日のシェルターは実は後ろまでかなりすし詰めだった(少なくとも私のいたところは)ので動きづらかった。ラストの京都線でマイクだけ持ったヤマトさんがみんなの上で「君がいない夜って」「何してた、何してた、何してた、何してた」と何度も何度も繰り返す姿があまりにも綺麗で、その声も綺麗で、金色の髪の毛も綺麗で、とにかくまあ本当に綺麗だった。CRYAMYやPKshampooに出会ってから、"綺麗"という言葉の概念が変わった。真っ直ぐで純粋で素直で代わりの利かない音や言葉やそんな人が綺麗だと思うようになった。PKshampooはそういうバンドだと思う。代わりの利かない、私や誰かにとっての、星のようなバンドだと思う。

 

二番手だったCRYAMYは、わからないけど感覚ではPKshampooの倍くらいの時間やっていたんじゃないかと思う。曲が始まる前、カワノさんは第一声に「悲しいことはありましたか」と、そんなことを聞くとは到底思えないほどギラギラした目でそう放った。「悲しいことがあるなら全部置いていってください」「悲しいことは全部俺がぶっ壊します」頼もしい、と思う間もなくオオモリさんがドラム(シンバル?)を叩いて始まるcrybabyは、"世界で一番"と思ってしまうほどカッコよかった。カワノさんが「ちゃんと、泣けよ!」と叫ぶ。私は笑っていたと思う。「ちゃんと泣けよ」と言ってくれたことも、crybabyがカッコいいことも、私が今ここにいることも、CRYAMYに出会えたことも、全部嬉しかったから。

去年の11月のツーマンはよく覚えている。その少し前にCRYAMYを知って、行きたいけど初めて行くライブハウスになかなか勇気が出なくて、ウダウダしてたらいつのまにかソールドアウトしていてすごく後悔したライブ。その日のライブ映像は腐るほど見た。当時は一日十回は見ていた。全然盛ってるとかじゃなくて、むしろ少なく見積もってるくらい。もう私行ったんじゃないかってくらいとにかく繰り返し再生していた。私もCRYAMYに出会って一年だし、京都線じゃないけど、CRYAMYに出会う前って何していたのか思い出せない。何を見て何を聴いて何を着て何を信じていたんだろう。そのくらいCRYAMYは今私の中で大きい存在だ。

Pinkから普通の二曲はあまりに刺さるから、やっぱりこれは"暴動"だと思い直す。でも「友達は大事にしてください」とカワノさんが言って始まった物臭は悲しくなるほど温かくて、これは何に対する暴動なんだろう、と思ったり。今さらだけど私は「RIOT」というタイトルがすごく好きだった。発表されて意味を調べたときはなぜかドキドキした。そこからMCを挟んで、なんかタカハシさんがいじられたりしていたけど、締めくくりにカワノさんが「タカハシくんお願いします」と言ってすぐ弾き始めたイージリーのイントロが緩急抜群でとてもカッコよかった。

やっぱりディスタンスってすごい曲だ。CRYAMYの曲は本当に真っ白。最初から最後まで、全部、綺麗。Cメロなのかな、最後のサビ前の部分で「生まれてきてくれてありがとうございます」とカワノさんが言ったセリフは私が何度も繰り返し再生した去年のツーマンのときと同じもので、感動して、嬉しくて、もう、こちらこそ、って感じだ。

ノイズが鳴り響く中でカワノさんが「うるさいけどちゃんと聞き取ってください」と言うから頑張って聞き取った言葉は、今でも思い出すと目に涙が溜まるほど、私なんかの涙腺ではいくつあっても足りないくらい簡単に心に染み込んできた。「俺は!小さい頃はお母さんに守られて!いじめられたら先輩が守ってくれて!みんなに見捨てられたときは好きな女の子に守られて!東京に出てきたら東京の友達が守ってくれて!バンド始めたらメンバーに守られて!何もできないときは會田さんやリクさんが守ってくれて!」ここまではなんとか聞き取ったんだけど(細かい違いはあるかもしれないけど大体の意味は合ってる)、次の言葉がわからなくて、でも、たぶん、たぶんだけど、「歌ってるときはみなさんに守ってもらいました」と、そう言ったんだと思う。「嘘じゃないよ!」と子どもみたいに大きな声で叫ぶカワノさんが本当に綺麗で、私さっきから綺麗綺麗って言い過ぎだけど、CRYAMYもPKshampooも、本当に綺麗なバンドだったんだ。

「みなさんが誰に守られてるかは知らないけど」「その、あんたたちの世界は俺が守る」「12月25日!CRYAMYシャープスリー!一曲目!"世界"という曲を聴いてください」イントロのメロディーは今まで聴いたどの曲よりもカッコ良かった。期待していい。#3にもCRYAMYにもCRYAMYが守ってくれる世界にも、期待していいのかもしれない。いやもう、本当、期待しちゃうよ。本当に本当に良い曲だった。次の日のハングリーオーバーでも聴いたけどやっぱり良い曲だった。たぶんこれから何度聴いても良い曲なんだと思う。とにかくイントロが希望みたいだった。明るかった。

本編ラストはプラネタリウムで締められて、アンコールはテリトリアルだったんだけど、結構序盤のほうでカワノさんのギターとタカハシさんのベースの音が出なくなって(なんかトラブっていたんだと思う)、レイさんのリードギターとオオモリさんのドラムだけの演奏で歌われていた。それはそれで楽しかったけど、やっぱり少し不完全燃焼と思っていたらベースとカワノさんのギターを復活させてダブルアンコールへ。カワノさんが「さっきは音無しだったんでもう一回音有りでやります」と言って、リベンジテリトリアル。これがもう、本当に、もう。「見えない奥の隙間に、触ってくれてありがとう!」って、またカワノさんが叫ぶから、そんなのこっちのセリフだと、泣きそうになりながら笑ってしまった。この日はたくさん泣きそうになりながら笑ったと思う。泣きそうになりながら嘘っぱちの笑顔を顔面に貼り付けたことは幾度となくあったけど、泣きそうなのに笑っちゃうくらい心から本気で楽しかったり嬉しかったり安心したりしたのは、初めてだったような気がしている。

 

月並みな言葉だけど、良い夜でした。

すべての悲しみへの暴動でした。