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好みの話じゃなくて、好きの話

4/20(sat) 下北沢DaisyBar 「crybaby」リリースパーティー CRYAMYを見た

 

カワノさんがライブ中に度々「言いたいことは先に言っておきます」と言って、感謝やら何やらを叫んでいたけど、私もその思いです。結論から言います、最高だった。幸せだった。今でも気持ちがフワフワしていて、ふとした瞬間にどこかに飛んで行きそう、でもどこにも飛ばさないようにずっと掴んでおきたい何かがここにあります。生きててよかった。間違いでも思い違いでもなく心からそう感じた夜でした。全く言葉にならないから、もういっそそのままにしてもよかったんだけど、やっぱりせっかくだからちゃんと噛み砕きたい。あと、こればかりは、CRYAMYに届くといいなと思ってしまっています。図々しくてすみません。

 

一日中、ずっとソワソワしていた。できれば前の方で見たかったけど、チケットは取り置きだし、そしたら先着順だから早く行かないとな、何時くらいに行けばいいかな、早く着きすぎちゃったら下北沢をウロウロしておけばいいかな、なんてごちゃごちゃと考えていたけど、結局駅に着いた頃には17時半を回っていたので、真っ直ぐデイジーバーに向かった。

何度目のデイジーバーだろう。ライブハウスのお手本のような狭さ、暗さ、うるささ、圧倒的日陰感。何度もCRYAMYのライブを見に来たこのデイジーバーで、今日は彼らのリリースパーティーが行われる。地下へ続く階段も、捻る方向が独特なドアノブも、四方八方に貼られているフライヤーも、二重扉もタバコの匂いも全部慣れ親しんだもののように思えてしまって、まるで自分のホーム箱のような感覚。デイジーバーでライブしますと言われると少し安心するのだ。だから今日はデイジーバーでよかった。

前から3列目くらいかな、よく見える位置に自分の空間を作って落ち着いた。取り置きだったのに案外前の方に来られてよかった。中に入ってから開演までは15分くらい時間があったので、とくに更新されないSNSをダラダラと眺めていた。

 

一発目の時速36kmのライブは、開演の時間を7.8分ほど過ぎた頃に始まったと思う。一曲目はたぶんこの場にいた誰もが知る、テリトリアルだった。まさか私はこの日がテリトリアルから始まるなんて思ってもいなかったので、興奮と感動、そして初めて見る時速のライブへの期待感が一気に膨らむ。いつもこの曲はカワノさんの突き刺すような声で聴いているから、仲川さんの少し震えた歌声で聴くテリトリアルは新鮮だった。とても良かった、というか、シンプルに嬉しかった。CRYAMYメンバーが慕うバンドがCRYAMYの曲をカバーしてくれたことが私は嬉しかったのだ。テリトリアルが終わると、いつも一曲目でお決まりなのかな、"三三七拍子"のフレーズで始まる七月七日通り。時速の中で初めて聴いた曲だ。あの時はまだCRYAMYのことも知らない時期で、たぶん去年の夏とかだろうか。この曲のMVの公開日に近いときに聴いたんだけど、その時はあまり印象に残らなかった。でも時が経って秋くらいにもう一度聴いたら、全然違って聴こえて、すごく好きになった。こういうことってよくあるよね。PKshampooなんかも私はその類いだ。

序盤のMCで仲川さんが「他の3バンドがすごく好きだから良い意味で少し緊張している」と言っていたけど、そんなことは一ミリも感じさせないライブだった。石神井川ジンライム(この曲初めて聴いた、良かった)を演奏して、終盤は怒涛の三曲だった。そのうちの一曲目が、クソッタレどもに愛を。この曲のMVと、わたしが今日デイジーバーまで歩いて来た道のりが、頭の中でリンクした。嫌いだった下北沢も、悪くないかななんて思っている自分がいる。こうやってCRYAMYを祝ってくれる場所があって、そんな人たちがいるから。"クソッタレどもに愛を うるさいくらいに愛を 歌っていくよ そのためのギターだろ"というストレートな歌詞、バンドのあるべき姿だと思って素直に感動したのと同時に、素直じゃない私は目線を上げていられなくなってしまって、そこからはずっと仲川さんが持つギターを見つめていた。それが終わると、夢を見ている。私の中で、時速と言えばこの曲だ。「知らない歌 あの子が口ずさむ」という歌詞で毎回胸がきゅっとなる。この一言だけで何を表現しているのかわかってしまうからすごい。私がそう思っているだけかもしれないけど。サビの歌詞は卑怯だよなぁ、どんなに大きいステージで歌ってもきっとずっと最高なんだろうけど、こんなふうに小さいステージだとより一層輝く気がした。これで終わりかと思ったら、だめ押しのスーパーソニック。完敗だ。最高だった。初めてのライブがこんなに良いライブで良かったんだろうか。それとも、いつもこんなにカッコいいライブをしているのかな。とにかくロックバンドだった。一番手を担うに相応しい、堂々とした熱いライブだった。

 

二番目、Hue's。Hue'sは前日もライブホリックに見に行っていた。先月のシェルター以来、完全に虜だ。もう新譜も買ってしまって、我ながらチョロいなぁと反省している。でもHue'sを前にしたらみんなチョロチョロのチョロだろう。貫禄がもう大御所のそれ。音源だけ聴かされて「アリーナでライブしてるよ」と言われても疑わない。曲の降り幅、演奏の重厚感、時速とはまた違ったベクトルで熱いライブだった。

そんなライブの一曲目が、ベランダ。この曲の間奏がすごく好きなのだ。YouTubeでベランダのライブ映像を見たときに、間奏の部分で一気にお客さんの拳が上がっていて、それが本当に素敵だった。"思いきって昨日開けたピアスの穴のような月"という歌詞が好きだ。アルバムを持っていないから100%この歌詞かと言われれば少し怪しいけど、聞き取れる限りではこう歌っている。違ったら恥ずかしいな。ポッカリ抜けた空洞が安易に想像できてしまう。そして"それをずっと眺めていた"と続く歌詞、良すぎないですかね。前日も思ったんだけど、一番最初に鳴らしたイントロがその場を支配していく感覚がある。一点から全方向に広がっていく点対称のような音、徐々に徐々にその空気に侵食されていく、Hue'sはそういうライブをする。ベランダが終わり新譜の四曲の中で一番好きな夏を待っているを演奏したあと、みんな大好きYouth。…なんだけど、あまりにも情報量が多くて、私はもうどこを見ればいいのか、という感じ。まずYouthのイントロで、ほんの一瞬目を逸らした隙に龍さんの首にピンクのローターがかかっていて、もう頭の中「???」という感じ。そのままなに食わぬ顔で最高の演奏を続けるものだから、私にしか見えていないのかと錯覚してしまうくらいだった。ステージの端ではカワノさんが機材かなんかによじ登って最大級の笑顔で("ニコニコ"という擬音の模範のような素敵な笑顔でした)ライブを見ているし、かと思いきやみずやんさんに手招きされて促されるままステージに乱入してサビを歌い始めるし、宴会場かな、ここは。でも最高だった。私は何よりカワノさんがこんなに楽しそうにしてくれて本当に嬉しかった。これを書きながらあの時の光景を思い出して口角が上がっているのが自分でもわかる。Youth、本当に良い曲。それと、個人的に旭さんの水色のギターが好きだ。爽やかさと憂いを同時に孕んでいる、Hue'sのライブにピッタリな色だ。十三ファンダンゴでやったスリーマンの話を読んでから、旭さんのブログのヘビー読者になりました。

あとは、Lukaが楽しかった。バンドはいつまでも私たちの憧れだ。少し前に出てきただけで手を伸ばしたくなるのだから、もはや光。(たぶん)そのあと「CRYAMYのメンバーが好きだと言ってくれる曲」と言って始まったドラマもすごく良かった。胸に詰まっていくような、今にも溢れてこぼれ落ちそうな感覚。何が、かはわからない。とにかく胸の中で着実に何かが増えていく。本当にHue's良い。カワノさん、Hue'sを教えてくれてありがとう。

 

三番手まで隠したPKshampooは、CRYAMYにとって秘密の最終兵器だったのかもしれない。ライブ前に、奇声を上げながらお客さんを掻き分けて(怯えさせて)ステージに向かって行くヤマトパンクス、缶チューハイ(たぶん)片手に音合わせ。ヤバい…。私ここにいて大丈夫かな、ライブ中にロケット花火でも打ち上げるんじゃないかと思った。…これは嘘だけど、そのくらい尋常ではなかった。でも、一曲目の京都線、それに続く空のオルゴールを聴いて妙に納得してしまった。ありえないほど良い曲なのだ。「良い曲」の概念が狂ってしまうくらい良い曲。発明。これほどの良い曲が常人から生まれるわけがない、そういう結論に落ち着いた。あと酔っていたんだろうな。私は空のオルゴールがとても好きで、回るもの、音が鳴るもの、終わるもの、この3つを揃えた"オルゴール"を曲名にして歌詞にも入れ込んだのが本当にすごいと思っている。たった1分半で人生のすべてを見た気になってしまうほどだ。天才肌というのか、カリスマ性というのか、今まで見てきたフロントマンの中でも彼はそれがズバ抜けている。

実際、この辺りからはもうよく覚えていない。断片的なハイライトになってしまうが、君の秘密になりたいの序盤で、ヤマトさんがチューニングの狂ったギターをそのまま放り投げて両手でスタンドマイクを握った瞬間から、全員のボルテージがMAXになった。そのままマイクを持ってヤマトさんが客席にダイブ。ステージに戻ってきたヤマトさんに抱きついたカワノさんを見て、とうとう右手を上げてしまった。まるでスタッフのように座り込んでチューニングを確認するHue's龍さん、歌うPKヤマトさん、お腹から客席に飛び込んだCRYAMYカワノさん、もうなんなんだこの人たちは。好きだ。愛しかない。ここ5年間の最高到達点。そのあと、翼もください、そして神崎川を演奏して、PKshampooのライブはそのラインをキープしたまま終わった。無敵とはこういうことなんだろう。ここまで上がった熱はもう下がることしかできないのか、そんな気持ちで、CRYAMYの出番を待った。

 

PKshampooのとき、たぶん本人も予想外のダイブだったのだろう、カワノさんがポケットにスマホと財布を入れっぱなしのまま飛んでしまったみたいで、スマホが見つからないというハプニングがあった。それがないと音の調節ができないらしくライブが始まらないので、みんなで足元を覗き込んだけどどこにも落ちていなかった。だが、それもそのはず、結局楽屋にあったみたいだ。人騒がせな主役、なんかワンピースの主人公みたいだなと思った。

さっき"この辺りからはよく覚えていない"と言ったけど、本当に覚えていないのはここからだ。SEが鳴って、オオモリさんが気合い十分で出てくる。その次に、タカハシさんが少し気だるげに、フジタレイさんがスマートに、そして早歩きぎみでカワノさんが出てきたときに、後ろから少し前に押される。カワノさんの最初の一言、「CRYAMYですよろしくお願いしまーす」と同時に、"思わず溢れてしまった"というような彼の笑みと始まったディスタンスのイントロが引き金となって、これまでの3バンドで溜め込んだすべてが弾けた。いや、爆発したと言ったほうが正しいのかな。人それぞれ、それが拳だったり叫びだったりジャンプだったりしたんだろうけど、私は涙でしかなかった。初っぱなのイントロでボロボロに泣いてしまった。PKshampooで上がりきった熱は冷めることなく壊れていったように思えた。なんなら私はこの一曲中ずっと泣いていた。今まで溜め込んできたものはこれだったんだ。カワノさんはギターを客席に放り投げて、歌うこともせずに、ただこっちが伸ばした手に応えるように手を伸ばし返してくれた。カワノさんが歌わない部分は私たちが歌った。一曲目のディスタンスも二曲目のテリトリアルもそうだった。カワノさんが私たちにくれた曲は、ちゃんと届いている。ちゃんと大事にしている。今日はそれを一時的に返しにきたんだ。全員分のそれをすべて受け止めた4人がその日一番輝いていたのは、言うまでもないのかもしれないな。

三曲目は、シングル「crybaby」の収録曲の中で一番最初に演奏されることとなったpink、続いて「好きだと言ってくれる人がたくさんいるから練習してきました」と言って始まった四曲目ビネガー、五曲目には鋭い普通。そして、友人のダンくんへ捧げた六曲目の物臭が中盤を支えた。個人的に、「重い腰だって上げ"た"けど」という歌詞変えにドキッとした。どうしても負の念が付き纏うこの歌詞は、こんなに綺麗なメロディに乗せられている。だから私は物臭の歌詞が好きだ。綺麗なメロディにも昇華されない後悔や憂鬱は、CRYAMYの中でも段違い。だから「あなたに言うように」の一言が、こんなにリアルに響くのだ。

「みなさんが死にたいと思ったときは俺も一緒に死にますよ」という言葉を吐き捨てて、七曲目の月面旅行が始まった。カワノさんのサウンドクラウドで聴いているときに聞き取れない箇所もあったけど、やっぱり、最後は「後は追わせてね」と歌っている。MCを聞いてそう思った。そうじゃなくてもいい、私にはそう聞こえたんだ。本当に「CRYAMYとわたし」だと言うなら、私が死ぬときはCRYAMYが死ぬときなのかもしれない。だってCRYAMYとわたしなのだから。だから私は、死なないように頑張るしかない。

そして八曲目にシングルの表題曲crybaby、そしてラストは九曲目のtenで締められた。pink、物臭、crybaby、tenと、シングルの曲順と同じ順番に散りばめられているから面白い。書いてみて思ったけど、本当に覚えていないな。でもその日に書いた日記を読み返したら、「好きな音楽が報われた日は私が報われた日」と書いてあって、思い出した。CRYAMYが報われたのかどうかはわからないけど、勝手にそう思ってしまって、自分まで報われた気分になった。私はCRYAMYに懸けているんだと気づいた。カワノさんが「命懸ける」と言ったときには「私は何も懸けてあげられない」と思ったけど、懸けていた。これが、懸けるということなんだ。嬉しいも悲しいも苦しいも愛しいも全部CRYAMYに捧げたから、いま私のアイデンティティーはCRYAMYにある。だから、私の気持ちを持っているCRYAMYが報われた日は私が報われた日だ。CRYAMYが幸せなら私も幸せだ。その逆だったとしても、だ。だって、CRYAMYとわたしなのだから。

CRYAMY史上初めてのアンコール、一曲目はtwistedだった。なんかアンコールに持ってこいの曲だな。やっぱり最初の一言は「ラブソングやります」だったし、しっかり両手で作られたハートマークは、間違いなく私たちに向けられたもので、このバンドを好きになって良かったと心から思った。そんなことを思えるバンドなんてそういない。タカハシさんのコーラスも好調、大好きだ。それが終わると本日二度目、時速も合わせると三度目、そしてこの日の最後となるテリトリアルが始まった。二回目が来るとは思っていなかったから嬉しかった。なんせ序盤のテリトリアルは号泣していたのでよく覚えていないし、そうでなくても揉みくちゃにされてよく見えなかったので今度はしっかり焼き付けようと思った。なのに、覚えていない。なんかスポーンと記憶が抜けている。思い出せるのは、アウトロの部分でドラムに突っ込んだカワノさんとタカハシさん、それに笑うオオモリさん、ただ客席を見つめてギターを鳴らすフジタレイさん、その光景だけはまだ鮮明に頭に残っている。一生忘れない、なんてことはできるのだろうか。無理なんだろうけど、思っちゃいるんだよ。忘れたくないと思っているんだ。

前後しちゃうけど、ディスタンスの、ラストのサビ前の部分でだったかな、違ったかな、とにかく一曲目のディスタンスのときに、「生きててくれてありがとう」か、「生きててくれてよかった」か、そんなニュアンスのことをカワノさんが言ってくれた。そんなことを言われたら、これからも言ってくれるなら、死ねるわけないよなぁ。ずっと"CRYAMYとわたし"でいたいから、なんとか、死なないように頑張るよ。

 

そんな感じかな。テリトリアルで始まりテリトリアルで終わった4時間は、過去最高にカッコいいライブを4回も更新して、最後はそのバロメーターが振り切って壊れた。そうなるともう、楽しかったとか幸せだったとか最高だったとかそんな言葉しか出てこないな。

全部が終わり外に出ると、案外暖かかった。冬はもう終わったみたいだ。下北沢を出て最寄り駅に着いたところで、友達と合流して少しだけ飲んでから帰った。財布にしまってあった千円札を出して買ったcrybabyを開けて一度だけ聴いてみたけど、耳鳴りがうるさくてよく聴こえなかった。

 

私は生きててよかったと思った。CRYAMYもそうだったら、こんなに良い日は他にないよな。